後継者難倒産の要因

2021年09月27日

全国の企業倒産が政府・民間金融機関による積極的な資金供給やコロナ対応の補助金などを背景に抑制されている一方で、後継者難倒産の発生は引き続き高水準となっています。

東京商工リサーチの2021年(1-7月)の調査によれば、『後継者難』の倒産は、全倒産に占める構成比で5.9%。これは調査を開始した2013年以降では最高値でした。

帝国データバンクの類似調査(2021年度4-8月)でも同様で、後継者難倒産が全体の倒産件数に占める割合は7.9%にも達しています。

また資本金別では、1千万円未満は112件(構成比53.8%)と、1-7月累計では4年連続で5割を超えていて中小企業における事業承継問題は特に顕著となっています。

 

 

『後継者難』倒産を要因別で見てみると、代表者などの「死亡」が最多で、『後継者難』倒産に占める構成比は52.4%と半数越えとなっています。

「体調不良」と合わせると構成比は全体の8割をも占めています。

 

別の帝国データバンクの行った調査結果によると(調査期間は2021年8月18日~31日)

事業承継を行う際の後継者への移行期間を尋ねた際、「3年以上」を要すると回答した割合は51.9%と半数超にのぼっています。

内訳をみると「3~5年程度」が26.9%で最も高く、「6~9年程度」が13.8%で続いています。企業の半数以上が「3年以上かかる」と回答していました。

またこの割合は中小企業の方が大企業より大きく、大企業で「3年以上」かかる割合は41.0%だった一方で、中小企業は54.1%、小規模企業は55.7%となりさらに高い結果となっています。

 

出典:帝国データバンク

 

出典:帝国データバンク

 

今後も、新型コロナによる景気後退や経営環境の変化が予想されます。こうした先行きへの不安感から、後継者不在で事業の将来の見通しがたたない企業での「あきらめ型」の後継者難倒産の増加へと繋がってしまうかもしれません。

一方で、政府は後継者不在の中小企業を対象に、第三者への承継に向けて取り組む場合に後継者マッチングの費用などの経費を上限額のうち最大で3分の2まで補助する等、事業承継支援に合わせて100億円規模の予算を計上しています。

2020年時点の国内における平均社長年齢は既に60歳を超え(帝国データバンク「全国社長年齢分析」2021年2月発表)、後継者不在率も依然として6割を上回るなど、事業承継の必要性は一段と増しています。

コロナ禍での事業承継、長い移行期間を見据え、対策を一層スピードアップ、強化することが求められています。経営者の皆様も事業承継問題を経営上の課題と認識されている方が多いものの、実際に動けていない方が多いのかもしれません。

政府は事業承継とM&A支援をワンストップで行う体制を4月より開始しています。まだ実際に実行に移すことができていない方も、これを機会に国の支援機関相談窓口として、各都道府県に設置されている「事業承継・引継ぎ支援センター」等を是非一度利用してみてはいかがでしょうか。

【参考資料】

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210810_04.html

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000353.000043465.html

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000351.000043465.html