事業承継を支援する公的機関のご紹介
2021年10月08日

事業承継を経営上の課題と認識しながらも、いざ検討しようと思った際に、まずどこに相談すればよいのだろうと悩まれる方も意外に多いのではないでしょうか。
そこで今回は、各種事業承継に関連する支援・サポートなど、相談に乗ってくれる代表的な窓口を幾つかご紹介したいと思います。
まず、国が各都道府県に設置している事業承継・引継ぎ支援センターや商工会議所、金融機関、税理士や公認会計士等の専門家などがあります。中でも事業承継・引継ぎ支援センターは、2021年4月に、第三者承継支援を行っていた「事業引継ぎ支援センター」に親族内承継支援を行っていた「事業承継ネットワーク」の機能を統合して、ワンストップで支援を行う組織として誕生しました。
事業承継に関する相談や事業承継計画の策定、マッチング支援などを基本的には無料(専門家派遣による支援実施の際は費用発生の可能性あり)で実施する機関です。
1,事業承継・引継ぎ支援センター
企業が後継者不在で廃業してしまうのを防ぐため、民間企業に引き継いでもらうM&Aでの事業承継の相談をメインとしています。売上が数十億円規模あるような会社であれば、黙っていても取引金融機関やM&A専門の仲介会社が手数料ビジネスとして積極的に支援してくれるケースが多いと思いますので、このように民間で全てカバーできていれば、公的機関の必要はないのですが、民間の仲介会社に多額の仲介手数料を支払うことが難しい規模の企業もあり、そうした企業が廃業してしまうのを防ぐため、事業承継・引継ぎ支援センターが全国におかれることになりました。小規模な事業者のM&Aを支援するのが「事業承継・引継ぎ支援センター」の最大の役割です。
2,後継者人材バンク
後継者人材バンクは、小さなまちの商店のように、他の民間企業に承継・買収してもらうことが難しい小規模や多業種の事業者からの相談も受け付けています。
元来、『事業承継・引継ぎ支援センター』は企業同士のM&A支援であり、小規模の事業者を十分に支援できていませんでした。そこで、個人の創業志願者を後継者候補として登録を促し、小規模な事業者でもマッチングに繋げられるようにと、2020年3月に『後継者人材バンク』が誕生しました。
M&Aで受け継いでくれる会社を探すのが難しい事業者であっても後継者を探すことができるのが「後継者人材バンク」という仕組みです。
事業承継・引継ぎ支援センターや後継者人材バンクは行政が関わっている機関だからこそ、費用負担がなく国の費用でサポートを受けることができ、幅広い事業者に門戸が開かれていることが大きな特徴です。
相談している途中でさらに経営に関するアドバイスを受けたくなった際には、多様な経営に関するアドバイス支援をしている機関への紹介も行っています。
3,その他の支援機関紹介
(1)よろず支援拠点
国が設置した中小企業庁の委託事業としての相談拠点で経営上の課題に無料で何度でも相談することができます。
全国に拠点があります(支援拠点一覧https://yorozu.smrj.go.jp/base/)。
課題の大小を問わず無料で相談できます。中小企業の経営者を「一人にしない」相談所となっていて、丁寧に話を聞いてもらうことができ、課題の整理に役立てることができる機会が得られると思います。
(2)東京都中小企業振興公社
東京都中小企業振興公社は、都内中小企業のための総合支援機関です。創業から事業化(製品開発・販路開拓・助成金)、承継・再生まで企業のあらゆるステージに対して豊富なメニューで支援をしています。
≪事業承継支援事業の一例≫
令和3年度 事業承継塾のご案内 https://www.tokyo-kosha.or.jp/topics/2107/0003.html
4,相談出来る場所があっても活用されていないという課題
2019年に日本政策金融公庫が発表した『引退廃業者の実態』調査によれば、そもそも後継者を探すことなく事業をやめたが全体の93.4%と9割を超えています。
出典:日本政策金融公庫・引退廃業者の実態より
また「相談しても解決するとは思えない」「相談しなくても何とかできると思った」などと考え、誰にも相談せずに廃業を決めてしまう経営者の方も7割以上となっています。
このようにせっかく相談できるような場があっても、そもそも後継者探しを行わない、相談をしない企業も多くあります。
しかしながら事業承継は我が国にとってはまったなしの課題であり、かつ、直ぐには解決できない時間のかかる課題であることに変わりはありません。後回しにせず取り掛かることが重要なのです。
中小企業庁が策定した事業承継ガイドラインでは経営者が60歳になった時に、事業承継計画を作り始め、5年から10年かけてじっくり事業承継を実現していくことが推奨されています。
何から手を付けたらよいかわからない方も、「まずは相談してみる」という一歩を踏み出すと、今後の道が開けてくると思います。
課題認識をされている経営者の皆様、先ずは気軽に第一歩を踏み出してみては如何でしょうか。
参考
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings191212_1.pdf
https://www.tokyo-kosha.or.jp/