廃業への道のりは平坦か?!(後編)

2021年01月06日

先回のコラム前編においては廃業するメリットについて触れました。今回は廃業するにあたって考えられるデメリットについてから以下(目次)順に述べていきたいと思います。

【目次】

Ⅰ.廃業するデメリット

Ⅱ.引退廃業者の現状アンケートについて紹介

Ⅲ.事業承継の検討

Ⅰ.廃業するデメリット

以下考えられる廃業のデメリットを列挙します。

①多くの取引先や顧客との関係が失われる

②従業員を解雇しなければならない。

通常、廃業する場合は従業員に退職金を渡して再就職のサポートをするものですがそれでも従業員の立場を不安定にすることは否めません。

③会社として培ってきた独自のノウハウやブランド等の暖簾の喪失(無形資産の喪失)

④資産売却で低く見積もられる?

廃業を決めると自社が保有していた資産を売却処分することになります。一般にも転用できる一部の資産を除き、ほとんどの資産は事業を行っているからこそ価値があるものなので多くの資産は思うほどの値はつかないかもしれません。

⑤廃業するにもお金がかかる(借金を残す可能性がある)

廃業による資産売却では、設備などについては、値が付くどころか解体や処分などに追加費用が発生するかもしれません。この見通しが甘いと経営者は思わぬ借金を背負う可能性もあります。

Ⅱ.引退廃業者の現状アンケートについて紹介

廃業後の約4割は生計に余裕がないと感じている!?というデータもあります。

 

引用元:日本政策金融公庫引退廃業者の実態

https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings191212_1.pdf

引用元:アクサ生命「社長さん白書2020」

https://www2.axa.co.jp/info/news/2020/pdf/201208.pdf

アクサ生命が発表している「社長さん白書2020年」によると、引退後の人生においてどう過ごしたいかとのアンケートから時間的余裕と精神的余裕を求めていることが伺えます。

経営引退後の収入の状況

下図は、引退した経営者の直近1年間の生活資金について見たものです。事業承継した経営者、廃業した経営者ともに、公的年金を生活資金としている割合が高く、主な生活資金を見ても、事業承継した経営者は公的年金と勤務収入、廃業した経営者は公的年金が中心となっています。少なくとも収入面でのゆとりはなかなか得難いかもしれません。

引用元:中小企業白書2019

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/chusho/04Hakusyo_part2_chap1_web.pdf

いかがでしたでしょうか。廃業を考える前に今一度現状を鑑みながら事業承継への道を探ってみませんか?

Ⅲ.事業承継の検討

経営者の方々とお話をしていると、「もう廃業すると決めているから事業承継なんかは考えたくない。」という声を耳にすることも多くあります。実際に引退廃業者の9割が後継者を探すことなく廃業?!というデータもあります。後継者の検討状況をみると、なんと「後継者を探すことなく事業をやめた」が93.4%を占めています。

引用元:日本政策金融公庫引退廃業者の実態

https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings191212_1.pdf

再び社長さん白書2020内アンケート結果によれば、回答者の半数以上の者が事業承継の方針を「決めていない」と回答しています。依然として計画的な事業承継への意識が不十分であることが浮き彫りになりました。

引用元:アクサ生命「社長さん白書2020」

https://www2.axa.co.jp/info/news/2020/pdf/201208.pdf

また、事業承継の方針を「決めている」と答えた経営者のうち、64.0%が「親族への事業承継」、残り(36.0%)がいわゆる第三者承継を考えています。

親族内承継がやはり現状の比率として1番高いのですが、優れた技術やノウハウの引き継ぎ先を広く求める手段として、第三者承継についても選択肢に加えていただきたいところです。

経営者の中には最初から「うちの会社を買う会社などないだろう」と思って検討すらしない人が多いかもしれません。しかしM&Aの環境は昔とは大きく異なっています。

廃業を決断する前に、一度は会社の売却を考えてみるべきではないでしょうか。M&Aなら雇用を守りつつ廃業することができます。承継によって得られたお金でこれまでの借入金等の返済に充当できますし、更には譲渡益を得られるという可能性も考えられます。

第三者承継も検討に値するのではないでしょうか。

最後に近年の第三者承継数の推移をご紹介しましょう。株式会社レコフによって「事業承継系」と定義されたM&A数について見ると、その件数は年々増加していることがわかります。

6

引用元:2020年度版小規模企業白書

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b1_3_2.html

近年ではM&Aを比較的低コストで中小企業も活用できるサービスとして、オンラインでのM&Aマッチングサービスなどが数多く登場しています。

経営を引退すること自体は決してマイナスなことではありません。引退準備の期間を長く確保する方が、引退後の経営者の生活の満足度の向上につながるという結果も出ています。

7

引用元:2019年中小企業白書 経営者引退後の生活

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/2019/html/b2_1_4_3.html

経営者として有終の美を飾るために、そして引退後の生活を充実したものとするためには何より大事なことは早めの引退準備です。事業承継するか廃業するかを含め引退準備の期間を長く確保し、その間に資産形成にもしっかりと取り組むことが必要だといえそうです。

〈参考文献〉

https://www.axa.co.jp/100-year-life/business/20191220/

https://gentosha-go.com/articles/-/27602?per_page=1

https://www2.axa.co.jp/info/news/2020/pdf/201208.pdf

https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/shokibo/04sHakusho_part2_chap1_web.pdf

https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/sme_findings191212.pdf